カリフォルニア州、LAにある、とある公立小学校を訪問した時のお話をしたいと思います。とても印象的でその後の私の人生に多大なる影響を与えた経験です。
アメリカの公立小学校というと、場所によって、いい教育が子どもにはうけられないと一般的なアメリカ人は考えているようです。これは日本でも同じ傾向で、名古屋のある地域の市立小学校や中学校も昔からそのようなことが言われているところがあります。
アメリカの劣悪環境というと、ギャング関係、ドラッグ、金属探知機など(ピストルやナイフ)が校内にはびこっている場合もあり、また外国人・移民の比率も多いので、英語での授業についていくことができない児童も多いのです。学習できる環境ではないと、普通の親は考えるでしょう。そんな環境でなくても、よりよい教育を望むから、授業料がたとえ高額でも、私立の学校へ進学を望むのは別におかしな話しではないと思っていました。また、そのような地域は必然的に低所得者層の人が住んでいることになります。親は主にブルーカラーの職に就いていることが特徴です。
そんな学校に赴任することになった担任の先生や校長の職務となると、どんな指導姿勢になるでしょう・・・・。諦めな態度となるのか。ある程度想像できると思います。
ちなみに、アメリカの公立小学校・中学校がすべてこんな環境であるということではありません。
LAにある公立小学校を見学させてもらうために、日本からここの校長とメールでコンタクトを取り、アポを取りつけ、アメリカへ発ちました。
アポの当日、車で学校に到着し、私のような観光客からすると「ふつう」の小学校のように感じました。外見からして、校舎に落書きなどなく、綺麗にされていたからです。地域も特に荒れたような感じもしませんでした。
しかしこの学校へ訪問する前のリサーチで、ローカルの人の話では、この地域は、治安面の悪さや低所得者層が多い地域なので必然的に、先の劣悪環境の学校を予想をしたのです。
さて、学校の受付に行くと、校長が来るまでの間待つことに。待っている間、多くの保護者たちがやってきました。メキシコ系の人、中国系、ベトナム系、フィリピン、カンボジア人らしき人など。日本人在籍数は0人です。白人、黒人が多数。多民族国家ですね。ほとんどの親が派手なTatooをしていたのが印象的でした。
そして、激務の校長が現れ、校長室へ案内されました。自己紹介を済ませ、校長が今日のために時間を作っていただき、校内ツアーに招待するとのこと。ラッキー!私は学校やクラスの現状の話だけでも伺えたらと思っていたからです。なんと各学年の授業をすべて見せ、体育館からカフェテリアまで案内してもらうことになりました。日本からの訪問は私が初めてだったようです。
校長自身、この学校に赴任されて5年目とのこと。赴任された当時の話をしてくれました。「当時はこの学校には文化というものがまったくなく、生徒たちは勉強などやる気なく、学校は薄汚れていて、とんどもないところにきてしまったな・・・と後悔したよ。なぜこんなところに。」ととても気さくに話していただいた。続けて、「私は、この学校に文化をつくろうと思い、当時の先生達と協力して作業を始めたんだが、ベテランの講師が多かったので、当然反論、ボイコットがはじまったよ。なぜなら新入りの校長がいきなり、何をいいだすんだ?!、みたいにね。」と。
話はだいぶカットします・・・・が、もうすばらしいの一言です。
さて、キンダークラスへ。部屋に入ると、20名前後の子供たちがみんな席に座って先生の言うことを聞いていました。入った瞬間から、雰囲気が期待していたものとかなり違っていました。というのも、児童が教室のあちらこちらで遊んでいるものと思っていたのが、皆姿勢正しく、授業に参加している・・・。 部屋の飾りも何か特別というわけどもなく、担当の先生もいつもの授業をしていました。
それから1年生から3年生まで各クラスの授業を見学。
私から各クラスの生徒2、3人に質問をしました。
「この学校が好きですか?」
そしてその答えに関する理由も聞いてみました。
全員「好き」と。逆に「好きにきまっているでしょ!」みたいな返事でした。本当に好きみたいでしたね。楽しんでいる様子。
途中、コンピューターラボを案内され、部屋の中は全部Apple製の最新のimacとipadが各生徒用に用意されていました。圧巻。
ここで疑問があったので、校長へ質問をしました。
カリフォルニア州は財政面が悪く、教育施設への支出を渋っているというのを新聞で読んだことがあったからです。なぜこの学校に、こんな高価な教材が完備されているのか?、と。
すると、意外な答えが返ってきたのです。「ある財界人がこの学校の素晴らしさ(文化)を認めてくれ、その子どもたちの教育のため、またその地域に貢献している学校のために多額の寄付を継続してされているから。」とのこと。すばらしい!
日本の公立学校でそのような理由で寄付がされるという話は聞いたことがないです・・・。
この後、この学校独特の文化を経験することになります。4年生と5年生、6年生の授業を拝見したときの衝撃は、「すばらしい!」感心したと同時に「脅威」と感じたのです。
この学校がすばらしいのは、最先端の教育資材が揃っているからではありません。ものではないのです。
そう、この学校の文化に感嘆した財界人は、この児童が将来大きくなって自分たちの会社で働いてもらいたいと思っても不思議ではないなと。
4年生のクラスに入ると、算数の時間でした。クラスの代表らしきの男の子と女の子が、私の前に現れて、「日本からよくいらっしゃいました。私たちがクラスを紹介します。」と。私は、「は、はい・・・」と何が始まるのかと、彼らについていくと、本棚にある本や使っている教科書を見せてくれたり、成績表までみせてくれました。その成績表を見せながら、一人は算数が得意だけど、運動などの苦手が科目があると。そして、もう一人がクラスメイトの紹介をしてくれました。クラスには、英語が話せない子たちがいるので英語が出来る子がその子たちを授業のサポートをしていて、逆に、英語ができなくても運動や他の科目が得意な外国人の子たちは、教えてもらった子たちに教えてあげることで、もちつもたれつの関係とのこと。すばらしい〜。
彼らに私から「この学校が好きか?」と同じ質問をすると、やはり全員「好き」と。この学年から、好きなところをたくさん話してくれました。ある子はとてもシャイでしたが、とても居心地がよいと、答えてくれたことが印象的でした。
5年生のクラスに入ると、音楽の時間でした。ドアを開けて入ると、生徒が全員直立して、日本語で突然、「ヨウコソ イラッシャイマシタ!」とクラス全員で挨拶をしてくれました。なんというホスピタリティーなんでしょう。日本人のホスピタリティーは世界一だと思っていますが、アメリカらしい愛情表見で本当に嬉しく思いました。担当の先生が日系の方でご主人が日本人とのことで、クラスみんなでこの私の訪問のために、日本語のフレーズを練習してくれたと話してくれました。感動〜!。
6年生のクラスは休憩でクラス移動時間だったため、見ることができませんでしたが、この校内ツアー最後のカフェテリアで、校長との話が印象的でした。
「児童がこのように主体的な態度へと変わったから、親の態度も変わり、親が積極的に学校の活動にも参加するようになった。だから、地域も変わってきた。そして、これがすこしずつアメリカ全土に広がりつつあるんだ。」
先の「脅威」と感じたのは、今、アメリカの小学、中学の世界的教育水準はどん底です。日本は世界三位以内に現在入っていると思う。今後はこの順位が変わってくるかも。アメリカは大学だけでなく、小中学校も世界最高水準になりつつあると。
今回の訪問で学んだのは、いかなる学習環境でも児童たちは、自分から率先し、みんなと協力して勉学に励むことで、だれも落ちこぼることなく、学業に専念できるわけです。低所得者の両親だろうが、犯罪率が多い地域の学校であろうが、外的な要因は関係ないんだな、と。
たった一人の新任の校長が、こんなにも偉大な影響を与えられるなんて、本当にすばらしいことだと心底感じた。そう、情熱なんです。
英会話習得のための学習も同じで、学習者と講師との関係が目標に向かう健全性であれば、外的な学習環境がいかなる状態でも、学習速度はどんどん上がると思う。学習者の意欲と講師の情熱の化学反応で、すばらしいものができあがるんです。
児童のプライバシーの関係上、写真撮影の許可おりませんでした。いまでも児童の様子が焼き付いています。
安田 英承
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