1年から何十年間海外で生活し、日本に帰国した子どもを帰国子女と言っています。
今回は帰国子女のいる家族で、帰国後の日本の生活環境で、バイリンガル(日本語と英語)を目指している人の話です。
現地の生活環境と滞在年数、そして年齢によりその国の言葉の習熟度は子どもにより大変異なります。
幼児期から小学生の子どもというのは、性格にもよりますが、社交性が比較的豊富な子は、現地でもすぐにお友達ができ、その国の言語をすぐに身につけます。そんな子どもが親の目の前で英語を話すところをみると、「子どもってすごいな〜。」とか、また「日本に帰っても、なんとかして維持させてあげたい!」と思っているのではないでしょうか。
最近そんな問い合わせの多い帰国子女対象のクラスについて、10歳ぐらいまでに日本に帰国した子どもの話をしていきます。
もし帰国後も子どもをバイリンガルにさせたい、英語力を維持させたい場合、まず3つのことを考える必要があります。
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帰国後の日本語、もしくは英語を使う子どもの生活環境
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帰国した時の子どもの年齢
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親の覚悟
では、ひとつずつ説明します。
#1について、英語を使う環境が多いほど英語を維持できます。つまり現地に滞在していたときと同じような環境を日本で確保できればいいのです。もしできない、困難なのであれば、日本語の環境にいる子どもの英語力はあっという間にその環境に侵食されていきます。それもものすごいスピードです。
家族で英語を話す、使う機会がない場合、現地でも日本語で生活しているので、当然日本に帰国後も、家族では日本語なわけです。そこで現地で購入したDVDや絵本などで家庭内に英語環境を作りますが、それだけでは足りません。なぜなら子ども自身が英語を使う、話す機会が同じように作ることができないと、ある程度の英語力の維持はできますが、たくさん英語教材を購入した割に、期待したほどではないかもしれません。
#2について:帰国時の年齢が小さいほど忘れるスピードが速く、3年以上滞在していても、帰国後3ヶ月ぐらいで持っていた英語能力の半分ぐらいはあっという間に消えている子をよく見ます。
帰国時の年齢と「クリティカルエイジ」(脳の学習限界年齢)を知っておくといいでしょう。この年齢のボーダーラインというのが人間の脳には存在すると言われています。
ある資料では、このボーダーラインが10歳とか13歳まで、またその年齢までにネイティブの音が聞き分けられる、ネイティブのような発音ができる、絶対音感が持てるなどいろいろ諸説あります。
例えば、海外で自然と身につけた帰国子女でも、クリティカルエイジ前に帰国し、日本語の環境にどっぷりとハマる生活習慣の子どもは、あっという間に英語を忘れます。ただし0%ではないようで、英語独特のアクセントや日本語にはない発音などができたりする子を見ます。
ただし、その年齢前から海外生活を始めて、そのボーダーラインを越えてから帰国した場合、日本語の生活環境でも子どもは比較的英語を忘れにくく、また忘れるスピードも遅いようです。
「自然に身につけた英語」と「苦労して身につけた英語」の違いがあるように思います。
そして#3について、「親の覚悟」。これを本当に理解している親は、英語を苦労して身につけた経験があるかどうかです。#2の子どもの帰国時の年齢は親としてよほどの事情がないと変えることができないかもしれませんが、#1の帰国後の英語環境は意図的に作ることができます。
そして、子ども自身がこれからも英語を話せるようになりたいかを、親が理解してことも必要です。親が「覚悟」を持って子どものバイリンガルを維持させる「決意」があっても、子どもにやる気がなければ、すべてお金と時間の無駄になりかねません。
また注意しなければいけないのは、子どもが日本語の読み書きをどのくらい理解できていて、日本の学校の授業についていくことができるのかを理解する必要があります。その場合は、補習授業を受講するなどカウンセリングを受けるといいでしょう。
また学校での友達関係も、友達の日本語のレベルについていけない場合、友達作りに苦労することもよく耳にします。これは日本に限らずどこの国でも同じ傾向です。同じ言葉を理解できない子に対する残酷な経験をすることになるかもしれません。家庭での子どもの心的ケアも必要です。
それらを乗り越える親の覚悟と決意、そして、子ども自身がバイリンガルになることを選べは、何も障害はないはずです。
日本の環境で日本の学校に通い、普段日本語しか使わないのであれば、英語維持とその向上には、
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子ども自身が英語を使う環境を増やすこと
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身につけた英語を体系づける努力(子どもが文法を理解できる、日本語と英語の違いを比較できる場合)
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読書
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文章を書く
現地で身につけた英語を体系づけること、特に自然に英語を身につけた子どもにとって、日本の英語教育:英語を日本語で理解することが、できるようになる必要があります。また、身につけた英語力を強化するために、忘れにくくする効果があります。つまり日本にいても英語の勉強をしてくださいね、ということ。
あと英語で読書と英語で文章を書くこと。これは日本語でも同じです。語彙力を増やすことができます。
現地で身につけた英語が小学生のままで、大人になっても小学生レベルの英語の読み書き能力では、必要十分とは言えません。上達するためにも日頃の習慣が絶対に必要です。
さて、
わたしたちのような英会話スクールに問い合わせがある場合、よく質問されることは、
「ネイティブ講師ですか?」
逆にその質問をしない親御さんは、子どもの英語力維持の方法を理解している人、もしくは英語を現地で苦労して身につけた経験のある親御さんのようです。
つまり、講師がネイティブであろうが、子どもの英語力維持には関係がないということ。一番重要なのは、子どもが英語を話す、使う機会をどんな手段でもよいので、できるかぎりたくさん持つことです。
以前問い合わせのあった人は、アメリカに滞在していて、その時、子どもが通っていた現地の学校の友達が白人の子ばかりだったので、「アメリカ人のネイティブで訛りのない英語を話す白人の先生がいませんか?」と質問があった時は、「・・・・・」。気持ちはわからないこともないですが。
帰国子女が、普通の子どもが経験しない、周りからも理解されにくい長い苦難を乗り越えて、日本の環境に適応し、普通に学校生活ができ、何年も経った今でも英語力を維持、向上させて社会人になって活躍している背後には、帰国後の親の強力な決意と行動力、子どもに対する思いがあることを忘れてはならないと思っています。
そんな家族の皆さんに通っていただていることを誇りに思います。
安田 英承
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